理事長ご挨拶

個性がぶつかりあって光り輝く日展を

 奥田小由女前理事長による公益社団法人日展の大改革から9年目を迎え、このたび新理事長を仰せつかりました。日展は、日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の五部門からなり、毎年全国から10,000点を超すご応募をいただき、入選者と会員などを合わせて約3,000点の新作を国立新美術館の会場に展示しております。
 作家が一年間の思いをかけて制作した作品の展示。そこには良い意味での競い合い、輝き合いが出ています。光の三原色は最後に透明になって光り輝きます。一つ一つの作品という「光」がぶつかり合って、より明るく、より透明な輝きのある日展になったら嬉しく思います。
 井上ひさしさんの言葉で「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく……」というものがあるのですが、私は真ん中を取って「難しいことは面白くやれば良い」と考えております。展覧会は作った作品を発表するだけではなく、鑑賞者との距離感をもっと縮めて、共に楽しむ場、感動を共有する場としたい。たとえば冬の極寒の世界を表現した作品があるとすれば、それを見て何か冬の厳しさやワールドスポットを体感できる。私の作品なら、皆で楽しんでイルカと一緒に泳ぐ気持ちになっていただけたら嬉しいと思います。
 作家は一年をかけて作品を作ります。そこにはドキドキや喜怒哀楽、目的に向かう葛藤があります。作品を見ることで、その一年間の葛藤を瞬時に共有できる。「面白い日展、明るい日展、楽しい日展、みんなの日展」というようにどんどん広げていって皆で楽しみたいと思っております。
 そして五科あるわけですから、作家の様々な作品を通して鑑賞者が同じフィールドにいられるような環境を作れたらと思います。日展は面白いものを発見する場所、生きたステージ、舞台です。そこで人間模様が展開されていきます。
 115年という長い歴史を振り返り、日展という土壌があったからこそ、毎回厳しく立ち向かい切磋琢磨して数々の作品ができあがってきました。日展が皆様にとっても夢のある楽しめる世界であっていただきたい。ぜひ多くの皆様にご高覧いただき、今後も皆様のご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

公益社団法人 日展 理事長 宮田亮平