受賞者・授賞理由

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改組 新 第3回日展(平成28年度) 内閣総理大臣賞受賞者・授賞理由

部門 題名 作者名 授賞理由
彫刻 月光 石黒光二 本作品は、両手を頭上に伸ばして立つ女性像を洗練されたフォルムで表現している。背部の月輪が作品に物語性を与え、写実と幻想が一つに溶けあう完成度の高い作品となっている。人体表現の技術力の高さに今後の日展のリーダー的役割が期待される。
工芸美術 月の光 その先に 三田村有純 自由な造形による漆立体作品。木胎、本固地塗、研ぎ出し蒔絵、平蒔絵技法に金粉、錫粉、漆、木、麻布等の素材を巧みに用い、月光を浴びて光る水の煌めきを表現しながら月へのロマンを立体造形化している優作である。
墨染 土橋靖子 和歌一首「墨染の」を横広の料紙に散らし書きした本作は、自由な筆を駆使しながら力を内に秘めた和の美を醸し出している。とりわけリズミカルな書とともに余白が効果的であり、墨継ぎによる濃淡の変化が豊かで新鮮な趣を生じ、筆者ならではの美の世界が構築された秀作である。

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改組 新 第3回日展(平成28年度) 文部科学大臣賞受賞者・授賞理由

部門 題名 作者名 授賞理由
日本画 虚寂 森脇正人 三匹の狼が凛と強く迫り来る。
見る側の心を鋭く射抜く目は、何を訴えているのか。
大きく変動する地球を案ずるかのようでもある。
強靭な背景による動的な主題、重厚な彩色技法による情動の効果を高く評価した。
洋画 逍遙・十六夜 難波 滋 この作品は新潟は柏崎のお祭りをテーマにしたものである。
月夜の狐の嫁入りの様子を描いたそうだが、強い主張を感じる秀作である。
これまでの日展の作品としては珍しいタイプだけに、改革が進む日展の中で、大きな期待が持てるといえよう。

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改組 新 第3回日展(平成28年度) 東京都知事賞受賞者・授賞理由

部門 題名 作者名 授賞理由
日本画 月日 山下保子 黄金の日を背に、月に座る女性。
芳しい花々が奏でる動と静のリズム。
彼女の見つめる先には輝かしい未来があるに違いない。
“今”という時代に在る女性像の位相が映し込まれた作品として高く評価した。
洋画 Moret 西房浩二 卓抜した表現力で対象の骨格を緊張感ある繊細な表現で的確に捉え、明るく爽やかな光の中に空気感をも見事に表現した傑作。
彫刻 大地の女神 楠元香代子 本作品は、仏像の形式を借りて現代社会を生きる女性の心象風景を表現している。その発想に新しさがあり、日展の人体彫刻に新しい一頁を加えたものと言える。
工芸美術 ムーヴ 佐治ヒロシ 作品は乾漆造形でムーブ動く形体を表現し静止しているように思えても実は人間が気が付かないだけで、全ては悠久の時のなかで変化していくものである。造形の中に艶と艶消しの技法で表現。
轆轤 真神巍堂 一言以って之を蔽へば曰く、怪力と神力の合体の作なり。人をして之を観れば仍然として雀躍已ま不ら教む。

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改組 新 第3回日展(平成28年度) 日展会員賞受賞者・授賞理由

部門 題名 作者名 授賞理由
日本画 西田眞人 双樹がもたらした心象的な情景に現代の様相を重ねた作品である。
濁りのない彩色による卓越した筆触の効果を高く評価した。
洋画 雪山と台地と谷間 成田禎介 作者は長年にわたり細密でありながら雄大な風景を幻想的な絵画世界へと展開している。
緻密さの中に夢のある世界をかもしだした秀作である。
彫刻 明日を呼ぶ鳥 木代喜司 本作品は、二人の人物と小鳥の組み合わせによって平和な暮らしの風景を生み出している。埴輪を連想させる穏やかな表情が印象的である。具象人物像によって人々の願いを的確に表わす技術の高さが評価される。
工芸美術 春のゆく 井隼慶人 植物を模様化し大胆な画面構成の中にバランスよく配置した作品は、作者の鋭敏な感性を感じさせる。染の技法も駆使し黒色を基本に美しい緑や赤などを破綻なく染められている。
四海兄弟 河野 隆 簡潔で平易な四字を見事な布置で表現した作である。上部の横画と、下部の縦画を中心とした難しい構成を見事に調和させ、古典的な様式の中に近代的な趣を示している。

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改組 新 第3回日展(平成28年度) 特選受賞者・授賞理由

第1科 日本画(平成28年10月20日発表)

題名 作者名 授賞理由
study 石田翔太 真摯に自己と対峙する姿勢、その過程や痕跡が新鮮な感覚で表現された良作である。線描と色面の構成が内容とマッチしており、内省的な作品を重苦しくなく、しかし奥深い表現が見事になされている。
野仏図 伊東正次 峠の山道の分かれ道か、柔らかな浄光が蝶の飛翔と共に、野の草と枯葉に降り注ぐ。素朴な仕種さの野仏は、この神光を導き、旅人の進路をやさしく伝える。作画の意図と技巧が一致した高度な完成度を持つ作品である。
雪花の森 稲田亜紀子 雪花とは雪の結晶をルーペなどで観察すると花の様に見えることから冬の季語となっていますが、本作品は雪を白い花に見たて、少女が冬と共に春のおとずれを待ち、愛犬とブーツで森をめぐる夢のある秀作です。
萌え出づ 神出睦子 東洋山水画の構造を文人画の点苔表現を基礎にしつつ練り上げた力作である。柔軟な筆遣いながら自然の細部を拾い上げた画面には力があり、この山水を見つめている作者が確かにここに立っている。風が吹いている。
水辺の訪問者 國井たか子 静かな水辺にカエルの声が聞こえる。確かな観察力と描写力から自由な画面構成を作りだしている。不思議な魅力がある。
善悪の交錯 谷川将樹 難しい題材に取り組み、大胆な構図と色彩により表現された作品からは、作者の力強い意志が伝わってきます。対象に向かう姿勢と情熱が、より明確に感じ取れる見応えのある力作です。
樹の下 辻野宗一 木々の息吹きを奏でるような軽妙で歯切れの良いタッチと、研ぎ澄まされた実感のある色彩で瑞々しい空間を創りあげている。作家の才気を感じる。
たゆたう刻 畑中那智子 冬枯れた樹枝は神経質なほどに重なり合い、複雑なモノトーンの表情を作り、茅葺きの大屋根をおおう。暗部の微妙な諧調を克明に捉え、対象の質感と量感を確かなものとする。春を待つ心は緩やかにたゆたう。
柳橋広司 難しいモチーフに挑み、巧みな構成を成しています。真剣に向かう匠の熱い姿に、感動した作家の熱い思いも作品から伝わってきます。
時の雫 吉川咲江 闇の中に現れたコンクリート。指先の奥に感じる湿り気と、ひび割れた手触り。静寂を断つトカゲの色彩が呼応するものは何か。無機と有機の対比による説得力、対象を描く緻密さと大胆な構成力を高く評価した。

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第2科 洋画(平成28年10月16日発表)

題名 作者名 授賞理由
卓上の静物 大竹正治 静物画に長く取り組んでいるが、毎回様々なアイディアで変化のある作品を制作している。
今回はオーソドックスな構成だが、青っぽい統一されたモチーフに赤い布を配置し、鮮やかな画面になった。
胎動 春日裕次 彼は若い頃オートバイマニアで愛車に乗っていたそうである。作品は、青春期を回想した「青春讃歌」として、生命感のあるパワーが画面全体から伺える。画面構成もしっかりした、力強い作品となっている。
馬と兵士のいる古墳 小材啓治 九州は彩色古墳の宝庫である。作者はそのような環境の中で育ち自己の絵画制作をする中で、古代の壁画におおいに魅了され、モチーフとしてきた。堅牢なマチエールの中に、古代の人々が感じ描いたロマンを、作者も又再現した佳作である。
微笑むあの日の思い出 才村 啓 卓上静物を単純化した表現で絵画的に描いている。暖かい自然感のある色彩が、対象物の物質感をそのまま伝えてくれる。極めてオーソドックスに対象と向き合う作者の姿が想像できて好ましい。
24時のアトリエ 戸部善晴 造形表現での点・線・面を平面で近年追求し、平面での形を構成し、色彩の組み合わせ、画材の特徴を生かす表現をした秀作である。
Bard’s Tale 松本貴子 一見、古典絵画を連想させられる作品であるが、彼女はゲームキャラクターをデジタル制作するプロの一面を持つ。本作もその感性を生かし、洗練された舞台美術のような構成で、魅力的な女性を表現した秀作である。
手鏡 西田陽二 衣装のレースの細やかな描き込みや、衝立の螺鈿の表現など、適確で上質な描写力に加え、巧みな画面構成が冴え鑑賞者の胸を打つ。
画面から手鏡を持つ女性の想いが伝わってくる。
再生 La pivoine 中土居正記 最初の審査に登場したときに、華やかな雰囲気を漂わせ魅了された。花束を入れたミルク缶だろうか、抱えて少女が瞑想している。じっくり見ると不思議に、そして不自然さに満ちていることに気づかされる優秀作である。
刻の影 前田 潤 抽象画を描き続けて来た中で、その空間の広がりは厳しく、造形と構成力を駆使しての空間処理は、静かな空気感が画面に豊かに表現されている。モチーフを極力最小限に縮小し、その空間に負けないリアルな表現力は、絵画性の高い技術力を感じる。好感の持てる優作である。
栗ヶ岳の見える丘 西谷之男 屋外の現場にF100 号を据えて描く実直な画家である。彼の眼差しは雄大な自然の臨場感を生み出し、見る者にその場の空気感までも伝える。

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第3科 彫刻(平成28年10月20日発表)

題名 作者名 授賞理由
涙の行方 井上周一郎 大理石の白とその陰が作り出すコントラストが美しい。ギリシア以来の古典的なポーズの中に、静かなムーブメントを秘めた静謐な作品に仕上がっている。石彫という仕事の厳しさを感じさせない優美な作品である。
磐州の陣 大亀清壽 荒々しいタッチのノミ跡を残しながら、全体的にシンプルにまとめあげた、堂々とした木彫作品である。一方、軸をやや傾けることで、不安定な社会を表現しようとする作者の意図が伝わる力作である。
岡本和弘 大胆な三角形のポーズと、強い意志を感じさせる目の表現に、何かを訴えかけようとする作者の心情を投影するかのような作品である。確かな木彫技術が窺われる秀作である。
小宮山美貴 容赦なく過ぎ行く「時」を、手で受け止めようとする姿が表現されている。その姿は今を生きる人間の象徴のように感じられ、それをシンメトリーのポーズと確かな構築性で表現し、ヒューマンなメッセージを伝えようとした点が評価された。
空気の底 紺谷 武 天を仰ぎながら座せる女性と地を向く女性の姿を対比させることで、人間の様々な心情を表現した作品である。的確なデッサン力とデフォルメを駆使し、構築的な空間構成が評価された。
Dall sheep on cloud 9 鈴木紹陶武 アステカの急峻な山岳地帯に住む羊を雲に乗せた姿で表現した着想がユニークな作品である。雲の上をゆったりと歩くのどかな情景をファンタスティックに捉えた作家の意図には、詩情があふれ、それを確かな技術で遺憾なく表現した秀作である。
東 誠 現代社会に生きる若者の複雑な思いを内在しつつ、前向きで強い意志と青年らしい爽やかさを感じさせる作品である。青年の若々しい身体を的確な構成力と表現力でまとめた秀作である。
明日の光 森田一成 なんというボリュームであろう。粘土の量塊を空間に投げかけるような、エネルギッシュな量感の構築が美しい。古代のヴィーナスのように細部を省略した人体の塊に「明日の光」というタイトルをつけた作者は、現代を生き抜くための力強いメッセージが込められているようでもある。
古い言葉 安田陽子 まっすぐ前を見つめた女性の自然な姿を捉えながら、細部を極限に単純化し、ほのぼのとした色と一体化した作品である。量感の表現とともに質の高い造形性が感じられる。「古い言葉」を時空の揺らぎと見た作者の感性が窺われる。

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第4科 工芸美術(平成28年10月16日発表)

題名 作者名 授賞理由
シェイプド・ボード 浅井啓介 漆の抽象的な立体表現で、異なる2つの世界を具現化させた作品である。溜め塗りと螺鈿を使い、赤と黒の世界を大胆かつ繊細に表現した。重厚感と質感にこだわりの有る、堂々とした作品である。
或る日の雲のかたち 安藤タヅ子 本友禅染の筒描きの技法をモノトーンの色調で効果的に生かした秀作である。悠然と浮ぶ雲を本人の心象的なイメージと重ね合せ、山波を画面の主軸と右隅に配置し緊張感のある構成となっており、配色もすばらしい。
厳冬・帰港待つ刻 大野秋次 十月中旬になると寒さが厳しく季候が刻々と変わる中、漁を終えて帰港する人々を一体化し、アルカイックでプリミティヴさを残した清らかな印象を、人形と木彫を融合した新しい感覚で表現した力作である。
月下の波濤 川口知子 月明かりに照らされた自然の生み出す美しい光景に感動を覚え、その一瞬を、3 種類の革を貼り合わせ、断面に見られる縞模様は濡らすことで出来る皮独特の表現で、形づくりの変化を効果的に制作している優作である。
刻-光彩 佐々木真澄 幻想的な彩夜を、七宝と金工でロマンチックに表現している。作者は、画面全体の構成に七宝で安定した形体を求め、細部は彫金の技法で「自然の形象」を表している。絵画的で叙情性あふれる秀作である。
部屋へ 武腰冬樹 既成の陶芸のフォルムにこだわらずに成形された作品は、黒地にのびやかに彩色された青色の2色で構成され、未知なる部屋へと続く空間を見る人に想像させるレリーフを内部に施した堂々とした造形である。
遠い記憶 田中貴司 輪島塗りの蒔絵の確かな技術を身につけている作者は、その高度な技法を駆使して豊かなセンス溢れる画面を表現している。操り人形と今までの自分自身の道程を重ね合わせ、作者の心の内を見事に表現している。
生命体 谷口信夫 植物の生命力に感動し、一つの新しい生き物の様に力強い造形で、豊かに表現した秀作である。材質は、本体の部分は欅の塊から本目を活かし、蓋を開けた内側の部分は桧を使い、象嵌模様が、施されている。
景-何処より- 福富 信 白と黒の対比する形から生まれるユニークな造形表現が今後、日展に新しい方向性を示す事を感じさせる秀作である。
風光る 向井弘子 風を受け、勢いよく岩盤を流れ落ちる山中の滝。
水が月光に輝き心に響く。
山、樹、水、月、星、風、光など、さわやかな自然の美しさを彫鍛金の技法で表現した力強い作品である。

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第5科 書(平成28年10月17日発表)

題名 作者名 授賞理由
道在瓦甓 稲村龍谷 余白を呼応させた構成とし、輪郭を大胆に排除することで印面に光を取り込んだ。筆意と刀意の柔軟な対応を見せる線状からは瀟洒な趣きが感じられ、生命感溢れる見事な朱白の世界を表出している。
勝斌句 大橋洋之 重厚明快な線から発するエネルギーの凄さと線の存在感、ゆるぎない構成による金文特有の白黒の変化が美しい。造形性と精神性のバランスがよく品格が高い。表現力が豊かで、紙面全体に新鮮な気が満ちている。
鐘を聞く 岡本藍石 強靭な線でもって奔放自在な草書作品を見事に書きあげている。唐の懐素の狂草を深く研究した跡が窺われるが、決して格を逸脱せず、書が線の芸術であることを旨とした運筆に好感が持てる。
冬の池 奥山義治 この作品は大字仮名をリードするに相応しく、行間への働きかけ、作品上部への広がりといい、雄大な画面を演出している。落款の位置も良く、強さの中にしっとりと落ち着いた作品となっている。
金子大蔵 力むことなく、軽やかに行間を明るくとり、春の風が作品全体に流れている。
秋の月 柴原月穂 かなの線は一般的には軽くなり易いが本作は起筆をしっかりと紙面にくい込ませて多彩で、しかも、強靭な線が表出されている。凛とした波打つような運筆は、潤渇と相まって、爽快なリズム感を生み出している秀作。
沈約詩 鈴木赫鳳 十分な墨量の中に、渇筆を効果的に配し、メリハリの効いた表現となっている。冴えた線条で一気呵成に筆を動かし、大小の変化、余白も流れ、躍動感に満ちた秀作である。
嵇康詩 平形精逸 金文の書体を鋭敏なタッチで書き上げた作。筆先を露出しながら強めの筆触で表現する場合、往々作風に沈着性を欠くものだが、作者は、文字周辺に適度な余白を配し、墨量豊かに渇筆を抑制することで落ち着いた雰囲気を醸成してみせた。
さくら花 森上光月 繊細優美な仮名の美しい流動美を多彩に展開するとともに、見事な墨法処理がさらに相乗効果を発揮し、爽快な表現美を生んでいる。筆触の冴えがまた白をいかす格調の高さを示している。
偶成 吉澤石琥 木簡の線をいれ全体に一貫したリズム感がある表現で、線の長短、肥痩、文字の大小感が余白の美しさを自然な形で引き出し、全体に明るく引き締まった作である。

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