受賞者・授賞理由

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改組 新 第7回日展(令和2年度) 文部科学大臣賞受賞者・授賞理由(10月29日発表)

部門 題名 作者名 授賞理由
日本画 夏の夕 河村源三 部分的に箔を取り入れた装飾的な画面構成で、クロアゲハが舞う夏の庭の光景が描かれている。夕方の時間の静かな風情をとらえる感受性の豊かさ、ふくよかさを高く評価したい。
洋画 ヒトリ 桑原富一 構成力、色彩共に確実な進歩が認められる。室内における人物像を描きながら、心理的陰影の深い作品である。総合的な完成度の高さからここに大臣賞に推す。

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改組 新 第7回日展(令和2年度) 内閣総理大臣賞受賞者・授賞理由(10月29日発表)

部門 題名 作者名 授賞理由
彫刻 楠元香代子 やや複雑なポーズのコスチュームの作品だが、肢体の構成などうまくまとめて、主題にみるメッセージを静かに伝えてくれる作品。日展彫刻のイメージを新傾向のものへと展開させてくれることを期待する。
工芸美術 風通り抜ける岩壁 藤田 仁 タイトルの通り、この岩壁の隙間を通る風を感じ、さらにそのまわりを飛び交う鳥の鳴き声が聞こえてくるようであれば、この作品の意図を汲み取ったことになる。
作家は硬くて冷たい金属素材を用い、極限なまでに造形を簡素化して自然の情景などを表すというスタイルを一貫して制作されている。鋭敏な形態の構成や表面のヘアライン仕上げなどから受ける素材の印象と、表現されている穏やかなテーマのイメージとの組み合わせの意外性が一番の見どころであろう。
岸本調和の句 永守蒼穹 作者の磨かれた感性で、構造的に、技法的に、空間的に見事な調和体作品に仕上った。構造性、精神性が調和し、作者の鼓動が紙面に響く。

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改組 新 第7回日展(令和2年度) 東京都知事賞受賞者・授賞理由(10月29日発表)

部門 題名 作者名 授賞理由
日本画 草宴 岸野圭作 中心から三角形に広がる構図はより作品を大きくし、のびやかで気持ちが良い。
まず色彩の美しさに心が弾み美しい実、小さな花が愛らしく微笑む。一見単純なようだが、きちっとしたデッサンから描かれ伝統も加味し、日本画の魅力の出た力作。見つめる程心が奪われる。
洋画 秋くるる 丸山 勉 平面性を画面全体に押し出した彼独特の絵画世界を長年追求しつづけている。
今回の作品はさらに円熟を増し、色彩とともに観る人にうったえかけてくる、賞にふさわしい作品となった。
彫刻 私は飛びたい 谷口淳一 すがすがしい気分の漂う作品です。彫刻の回りを吹く風が、感じられるというのでしょうか。スッキリとした体のライン。しかし、それが立体であることの「存在の重み」を損なっていません。「飛びたい」といい、風に向かって歩み出しながら、決して“軽く”ならずに、主体の清新な決意(飛びたい、という)が真直ぐに、たしかな量感を伴って伝わってくるところに感心しました。東京都知事賞にふさわしい作品だと思います。
工芸美術 神々の座・那智 山岸大成 磁器の難しい素材を駆使し、日本人の心の深奥に存在している大いなる自然への畏敬の念を表現し、作者の卓越した技と感性の素晴らしさが人々の心を捉える見事な作品である。
蘇東坡詩 井上清雅 古典の香を表出しながら独自の書風を編み出した作品である。複雑な古代文字を現代風にアレンジし、黒と白の対比が見事、明るさを感じさせてくれる。

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改組 新 第7回日展(令和2年度) 日展会員賞受賞者・授賞理由(10月29日発表)

部門 題名 作者名 授賞理由
日本画 早春 池内璋美 沼地の水辺の木に佇む二羽のフクロウが描かれています。
鳥の繊細な性格まで描写され澄みきった豊かな自然が表現され、作者の独自性が伝わってくる秀作となっています。
洋画 窓辺にて 小川満章 写真的、映像的表現が横行する中、油彩画の伝統的明暗表現を用いて、逆光の人間を中心にした部屋の空気感を柔らかい筆さばきで表現した。情感溢れる作品である。闇の黒色は人間の悲哀とも言える。魅力的作品である。
彫刻 やすらぎ 櫻井真理 氏の作る彫刻は具体的な何かを形容するものでは無く、自然の摂理と自らの造形観・理念を源に構築され形づくられている。  本作品は三角形の安定した構成とモデリングが量感表現を引き立て、像の隅々にまで細やかな神経がいき届き魅力的な秀作となっている。
工芸美術 撓屈「瀝Ⅴ」 待田和宏 「瀝」一滴のしずくからはじまる水の流れが、岩肌を「撓屈」即ち撓(たわ)めて曲げた細線を作り、やがて美しい沢水となる光景を表現している。磁器は難しい陶芸素材だが、轆轤の一本挽きでデフォルメした器形をつくり、白磁から青白磁へと変化するグラデーションは透明ガラス釉の積層で表現しており、高度な技術的挑戦の跡が見られる。「自然と人工の美」が調和したところに生まれる陶芸美を遺憾なく発揮した作品で、会員賞に相応しい作品として推薦された。
ゆく春 木村通子 珍しく細字仮名を縦に多行をもって表現。繊細な筆致、張りのある線で熟達した技量を発揮する。
仮名のもつ優雅な世界を演出した秀作。とくに縦に一貫する行のつくり方は独特の味わいである。

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改組 新 第7回日展(令和2年度) 特選受賞者・授賞理由

第1科 日本画(令和2年10月22日発表)

題名 作者名 授賞理由
暮れゆく 天野澄子 夕刻の河川敷の情景である。急激に気温が下がり肌寒くある水溜りに犬が喉を潤す。水面に映る赤色の表情と草むらの存在が切々と観る者に伝わってくる。確かな技術と洗練された色彩感覚に特筆すべきものがある。
林檎 石崎誠和 初夏の林檎樹か、微かに未熟な果実が窺える。
魅力的な樹皮の表情と些か不器用にくねりつつも力強く伸び立つ様は、観る者に応じたそれぞれの豊かな実りを想起させてくれる。
黄昏の緋色 髙井弘明 全面に渡る緋色が緊張感を与える。船の残骸と集まる海鳥の対比、太陽と光の一線が世の中の不安と安心感の同居を生み、それらを被い隠す様に曲線と海鳥達の群が心地良いリズムを創り美しさが生まれたと思う。
返信のないメール 立花大聖 スマホを手にしたどこか虚ろげな表情の娘と背後に咲く花々と葉むら。繊密な描写力だが、よく見るとそこには鳥の頭や馬、顔、逆さになったウサギなどの断片的なイメージが潜む。不可思議な謎を秘めた画面である。
刻ノ痕跡 田中達也 何処にでも在る廃屋の作品です。テーマである、刻の流れを岩絵具に気持ちを込めて、様々な技法を用いて制作している痕跡が残り、画面の奥より作家の気持ちが滲み出て来ている様に感じさせる作品である。
谷野剛史 爽やかな中間色トーンで朝の食卓が心地よく構成された作品である。寒色に囲まれた暖色のテーブルにデフォルメされた器が縦位置に静かに配置され動線となり、家族を感じる美しい世界になっている。
誘境に 辻野宗一 筆跡と色彩の織り成すリズムが心地よく色感の素晴らしさが見て取れる。写生からくる情感と感性が絵肌に溢れ、山間に誘われる空気感が広がっている。静けさと優しさとその奥に感じる作家本人の心の真想が伺われる。
秋の日 西坂省三 木々の色づいた森を黄色系の微妙な色調でまとめ、しっとりと深まり行く秋の気配を醸し出して心良い季節感を表現した秀作となっている。
初詣 宮原 剛 初詣の願掛け情景を表した画で、二人の姿と影とのダブルで多くを占め、大胆な構図でまとめている。また、年の始めと作品の仕上がりを祈る内面的なダブル願掛けが伝わってくるようだ。
日輪讃歌 行近壯之助 画面から発せられる圧倒的な迫力と神話的イメージは、深さや大胆な構成要素が揺るぎない必然性を有して居るからであろう。それらは作者独自の世界観でありつつも、同時に確かな客観性をも孕んで居る。

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第2科 洋画(令和2年10月18日発表)

題名 作者名 授賞理由
マイナスの世界 池上わかな 凍てつく湿原に立ち、寒さを凌ぐ姿があたかも未来を見つめ祈っているようにも見える。女性と左右に広がる湿原がダイナミックな構成を成し背後に傾けた女性の体を水面から覗く倒木が支えている。絶妙の緊張感である。
悠久への想い 池田 茂 見た瞬間に存在を感じる驚きがあり、絵画の基本的な要素のひとつである三次元的空間が見事に表現されている。細密に表現された、艶やかな着物の若い女性を屏風を背景にした暗い空間の中から出現させている。
キャンバスを前にして 吉川和典 彼は二回目の特選である。自分をいつもモチーフにしてきた。最近、作品を見るたびに硬さがとれていくように思えた。それはなぜか…。外観を見ることから内面の観察へと制作が深まっているのだと思った。
マツ 佐藤京子 水彩では新しい感覚の作品である。墨を主にしたモノクロ調の作品で今後も更なる発展が期待出来る。常に前向きに新たな挑戦を続ける作家である。日展においては新しい傾向の作品を求めているだけに注目を引くと思う。
冬隣 佐藤洋子 写生する力がある。スケールの大きさと季節の空気を感じられる佳い作品です。
手・GA・MI 志水和司 メールが当たり前の今、この静謐な空気の中、少女は誰に手紙を書こうとしているのか。適切な描写力と統一された色彩による説得力のある作品となっている。
history 武石英孝 博物館に展示されている恐竜の骨格標本の前で若い女性がしっかりと正面を見すえている。とても強い印象を与える作品になっている。下からのスポットライトに当たる標本と逆光気味の人物と光の効果が面白い!
いにしえの舞 本田年男 映写機とポスターなどを黒い色調で表現して評価を受けていたが、今回はモチーフを一変して赤い和服と質感の違う小さな箪笥を配し、能面の白や扇子などを入れてバランスよく構成し質の高い秀作として評価を受けた。
白い刻 山本佳子 近年繊細な表現の人物画が多い中で単純化した表現の中にリアリティーを求めている。一見平面的に描かれた少女ではあるがしっかりした存在感がある。肌の色にも暖かな真実味があり空間の中で息づいている。
人形劇 米澤玲子 作家は西洋の操り人形に惹かれ人形をテーマに作品を描いてきたが、同じ題材でも変化し深められた。今回は人物を中心に置き、青と赤の色彩の強い対比を使いながら、美しく画面をまとめ、情感のある作品にしている。

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第3科 彫刻(令和2年10月22日発表)

題名 作者名 授賞理由
臥ゆ 秋田美鈴 寝そべりながら肢体を大きく反らした形態に、のびやかさとしなやかさを感じる表現である。日本の伝統的な乾漆技法を用い、素材の美しさを十分に生かした優れた作品である。
木洩れ陽 奥森日向子 自然体の動きの中に、すがすがしさを感じさせてくれる秀作である。おおらかな流れの中に、造形の確かさが光っている。確固たる存在感を発し、崇高な雰囲気さえ漂わせる。
大地 近藤哲夫 この像の青年は両足をひろげ、右手を強く握りしめて大地に立ち、夢と希望、力強さを感じさせる。生命感、安定感のある、堂々とした作品である。
東雲の湖 志萱州朗 人体の構成が造形的にしっかりできていて、とても伸びやかで、心地好い風を感じさせる。故郷を愛し、現代を生きる若き女性の一瞬の動きの美しさが見事に表現された魅力的な作品である。
重政信明 大きな塊の強さを、のびやかさ、しなやかさを損なうことなく、豊かでおおらかな女性の姿として表現している。彫刻の特質が強調され、大地の活力を得てそびえる樹木のような存在感を想起させる優作である。
追想 髙橋 忠 今までに思いを馳せながら、静かに立っている裸婦像である。柔らかなタッチで全体をまとめ、「優しさ」が、顔の表情、全身から表れた秀作である。この作品から醸し出されている優しさを観賞してほしい。
風をつかんで 田中宏典 静かなポーズのなかに、伸びやかな動きを感じる。豊かな量感と面の構築による確かな造形力は、作者の作品に対するひたむきな制作姿勢を感じる優作である。
誰も知らない空の果て 丹羽俊揮 重量感のある作品である。肉体の量をダイナミックに誇張し、ほとばしるような若さが伝わってくる。見上げるような姿勢とよじるような手の仕草に、夢と苦悩の混在を見事に表現した労作である。

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第4科 工芸美術(令和2年10月18日発表)

題名 作者名 授賞理由
「志向」その先 金井伸弥 相対する二つの方形は左右して素晴らしい緊張感を生み出し、空間を支配している。全体の黒と白金のラインを深い赤の上絵がぐっと引き締め、彫刻的な陶体は、作者が追求する「志」を力強く語りかけてくる。
okura rockets 近藤卓浪 畑の中でオクラが天に向かって育っています。あたかもロケットが天に向かって発射していくのではないかと創意を膨らませます。オクラが自然の中で飛び回り遊ぶ様子は夢空間そのもので、ローケツ染による表現の秀作です。
象嵌彩 暁の景 近藤 学 嫋やかな茶色の母体に、葦原に佇む雀に想いを重ねて、冬の暁光情景を表現しています。
黒土で大きな円形面を施し、葦と雀の象嵌技法を駆使して、夜明けの詩情が伝わる秀作です。
未来への兆し2020 齋藤卯乃 未来を見つめる希望の光がシャープなエッジとマスの造形、黒漆で表現されている。漆は、縄文時代から一万年以上に亘り使われてきた素材だが、その伝統的な素材が現代感覚溢れる美へと変貌している。
躍動 竹河いみ子 扱い難い素材を、さまざまな編み方を駆使して大きな作品に仕上げた。又、黒漆のしっとりとした質感が美しい。
題名の「躍動」そのままに、大きなうねりを力に変えて、跳ね返ってきそうなパワーがある。
始まり 冨岡大資 黒と白の配色で文様を強調させ、規則的な文様の美しさと未完の形との対照的な造形がこの作品の存在感を創り出している。中心から広がる光の粒子が拡散され、そこから始まる生命あるいは生命が循環するようなイメージが表現されている。
今を歩む 繁昌孝二 植物の種子などが、どの様な時でも耐え忍んで芽生き、次の世代に繋げる力強さを表現した。乾漆技法で成形し、朱漆と黒漆で巧みに塗りぼかし、螺鈿と乾漆粉で加飾し、蝋色仕上げによる秀作である。
青の領域 藤藁 隆 作者は古くからの友禅の技法を駆使、海の中を群れをなして回遊する魚群をモチーフにした作品である。加賀友禅独特の糸目技法による線描、ぼかし染により細やかに表現された背景のバランスが優れた作品である。
宙ありき 松木光治 二匹の蛙が宙を見上げるというイメージを、金属素材で色どりよく鮮やかに表現する。素材を接合してから鍛えたり、銀ロウ流し、緑青や艶出しなどの仕上げを効果的に画面に配し、軽快な雲や蛙が見る者を楽しませて、心地良い。
山口和子 水面を吹き抜ける風、沢山の花が咲く春の予感を表現した作品。青く光る水面には鮑の螺鈿、赤い花弁は色漆と金、風は銀箔など多くの素材や技法を用いているが調和がとれている。春の爽やかで幸せな気持ちになる秀作である。

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第5科 書(令和2年10月19日発表)

題名 作者名 授賞理由
弘育 石川靑邱 古代文字の造形的な楽しさを、古典に基づきながら明るく大胆に表現した秀作。強靭な線と軽快な線の響き合い、墨の黒と紙の白とのコントラストが見事である。奇を衒わず自然体で書かれたモダンな作品である。
島崎藤村の詩 川合玄鳳 藤村の歌に触発された書者の感性が、熱い思いが、文字の表情線の温もりに迸しりを見せ、全体が明るく健康感に満ちている。漢字にかなが美しく添い、親しみが感じられ、三行の構成に見事な昻まりを見せた作。
糸桜 川上鳴石 栃木の日本の名木百選に選ばれた西行桜を読んだ歌を、雄大に書き上げた秀作。中心がしっかりし、運筆が多彩で紙面の黒と白の対比も見事で、堂々とした風格のある作品である。
承顔接辞 辻 敬齋 小篆を基調としながら、清人の風趣も得て、伝統的で幅広い表現法が作品を充実させている。章法中、「辞」字などに見る小技のきいた点画の処理も見事である。普段の勉強の蓄積がこの作品の成功を導いたと言える。
戯娯 角田大壤 古代文字に現代の気を吹き込み、熱気、躍動感、生命力に溢れている。意欲的な表現で、線に存在感があり、造形的な新鮮さが際立つ。密度の中の空間(白)が印象的で紙面に響く。日展の未来が期待される。
山たかみ 長井素軒 古今和歌集七首を中字仮名で書く。充実した筆力と破綻のない筆遣いで一貫する。統一された行運びながら、行間の緊張感を持つ文字表現に熟練の技を見せる。中字仮名作品の秀逸作と言ってよい。
杜少陵詩 中村史朗 懐素や除渭の狂草風の作品を根底においた行草作品で、行書を要所に配置して確かな骨格と強靭な線を意識して構成している。後半に繰り広げる心情の高揚感と気の充実が見事で、横作品の流動美を表現した秀作である。
山たかみ 藤川翠香 和歌二首をやや細みの線質で書き上げているが、線は鋭く強く、渇筆の筆の開きも見事で清楚な品の良い作品である。仮名の良さを十二分に表現された秀作である。
清明 牧野聖雲 土屋文明の一首を大字で横に展開。濁りの無い清らかな墨色、内に秘めた筆の弾力を十二分に発揮、文字造形を巧みに使い分けて行間の余白の美しさと緊張感を演出した技倆は出色の出来。師風を超えた個性も称えられる。
楊柳枝詞 山内香鶴 行書体が持つ線の抑揚、肥痩、文字の大小、筆圧の自然な変化を生かし、余白と文字の調和が上手くとれている。
線質の強さと柔らかさとが同化した気韻に満ちた見事な作品である。

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