受賞者・授賞理由

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改組 新 第5回日展(平成30年度) 文部科学大臣賞受賞者・授賞理由(11月2日発表)

部門 題名 作者名 授賞理由
日本画 暮れゆく時 村居正之 「暮れゆく時」と題するこの作品は、モンサンミッシェルをモチーフにしていることが分かる。画家はこれまでも、主として海外の古蹟にその画因を求め、作画のイメージを拡げることで独自の絵画世界を構築して来た。それは青い色彩による静かな深い詩情をもって表現されていた。
本作品は、画家が更に新しい世界を目指して、茜色(暗紫色)の夕暮れに浮かぶ、モンサンミッシェルを写実ながら自らの心象の風景として見事に結実させているところが高く評価され、文部科学大臣賞を与えるに相応しい作品であると判断した。
洋画 新雪の河畔 町田博文 永年人物画を続け、その表現力はもとより風景と組合せる事で作者自身の感性と女性にたくした旅情を表し、今回は色調は押え気味ながら完成度の高い佳作となった事が評価された。

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改組 新 第5回日展(平成30年度) 内閣総理大臣賞受賞者・授賞理由(11月2日発表)

部門 題名 作者名 授賞理由
彫刻 合歓の花 笹山幸德 見る者の心をやさしく包みこむ女性座像である。人々の幸福を願う穏やかなほほえみが印象深い。古代ギリシアのアルカイックスマイルと仏像の慈悲の表情とを併せ持っている。東西の彫刻美を融合させ、現代の彫刻に昇華させた表現力が高く評価される。
工芸美術 佐治ヒロシ 長年にわたり漆の立体造形に取り組んできた本作は厳しくも魅力的な作品である。麻布を貼り重ねて造形し、表層に乾漆粉を蒔き、造形に力強さを与えている。部分に展開する朱漆の色は未来への入り口であり、艶のある黒色は過去への憧憬でもある。
とこしえに続いていくものは時間、空間を超えて人の心にあり、始まりも終わりもないものである。
吉野山 高木厚人 仮名特有の文字の連綿が自然と働きながら線の潤渇をうまく使い全体に抑揚が見られ、奥行を感じさせる。仮名の散らし書きが力むことなく構成されており、完成度が高い作品となっている。渇筆に弱いところなく、全体をひきしめている。

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改組 新 第5回日展(平成30年度) 東京都知事賞受賞者・授賞理由(11月2日発表)

部門 題名 作者名 授賞理由
日本画 白映に赤 長谷川喜久 作者は、鮮やかでインパクトの強い色彩を駆使し、人物や動物主題の構成表現に取り組んできた。今回は一転彼岸花の咲く水辺の景に着眼し、作者独特の白と赤の対比をクローズアップして見せている。極めて限られた期間、こつぜんと現れる自然の色彩の劇的変化をとらえ、うつろう空や季節の空気感まで感じさせる新たな境地を拓いている。これまでの研究成果が伝統的青緑山水の現代的個性的解釈にまでつながる可能性があり、今後の展開にも期待する。
洋画 ECHO-アトリエの裸婦 寺久保文宣 この題名からでも推察されるように、画才、文才共に併せ持つ異才である。日展洋画のアカデミズムの中で、唯一欠けていた一角である。つまり色彩、形体と共に理論を礎にした感覚派なのである。
予ねてから寺久保絵画に着目し、洋画の中で居場所を求めていた。この度の受賞は日展洋画の幅を革命的に拡げ、日展の将来に曙光を与えるに相違ない。
彫刻 harmony 工藤 潔 「排除」や「敵対」の声が大きい時代に「包摂」や「共生」はなかなか実現できない。作者の願い「ハーモニー」、まさに音楽の精神である。作品を前にすると慎ましやかな躍動感と澄んだ声の女性コーラスが聴こえてくる。
芸術の中でも彫刻は「パブリック・アート」の役割が大きい。この作品が設置され人々が目にすると自然に社会や世界が調和のとれたものと願わざるを得ない。つまりアートが社会をつなぐことをこの作品は実現させている。
優しく和ませる、そして分かりやすい秀作である。
工芸美術 森の詩 渡辺洋子 森の樹木の美しさ、四季それぞれの美しさを詩(うた)い、作者の幼少の頃からの想いであろうか、妖精が住むという森へのロマンを樹木と妖精を効果的に配置して、あたかもオペラの一シーンであるかのような美しい空間を構成している。
藤田東湖詩句 中村伸夫 藤田東湖の和文天祥正気歌を、中国の古代文字で三行に揮毫した力作である。独特の運筆と造形が作品に奥行きを与え、味わい深い躍動感に溢れている。余白を引き立てる紙面構成や、洒脱な落款も見事。

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改組 新 第5回日展(平成30年度) 日展会員賞受賞者・授賞理由(11月2日発表)

部門 題名 作者名 授賞理由
日本画 静かな時 松崎十朗 きっと日本海であろう。作者の奥深く住みついた鉛色が底光りの美しさを放っている。ふと「薄紫の思い出ばかりはせんなくて」朔太郎のうたを思い出す。
風景と云うより色が命を持った光景画である。
洋画 集落 前原喜好 近年は石造りの集落をテーマに描いていて、作品は完成度が高くその構成は目を平面上でまわすことを心がけている。
作品からにじみ出る情景は、現場のしみじみとした光景を想わせる佳作である。
彫刻 風眩し 齋藤尤鶴 未来に向って進もうとする若い女性の存在感と強い意志が感じられる。立像としての量感と全体のバランスが美しい。毅然と風に向う表情も初々しい。肌や衣類ののみの冴えもリズミカルである。木彫の柔らかな魅力を引き出している優れた作品である。
工芸美術 東風 2018・Ⅲ 久保満義 テーマとして「大地のいろ、命のかたち」を連続して追求表現している作品である。
左右対称の扁平な形は、ゆったりとした大地を思わせ、地肌の表現を含め、面の膨らみは、生きものの温かみが感じられる。
各所に工夫の跡がうかがえ、焼物らしい秀作である。
康有為句 井上清雅 大変瑞々しい伸びやかで、重厚な線質を用いて行草体を彷彿とさせるような流動的な筆致で書かれている。文字構成は縦長に下方を絞り、実にスマートで趣を感じさせる。
古い篆書体を現代的な魅力ある書風に創り上げている。

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改組 新 第5回日展(平成30年度) 特選受賞者・授賞理由

第1科 日本画(平成30年10月25日発表)

題名 作者名 授賞理由
静かな夜に 稲田雅士 異国の夜の街角であろうか、家路をいそぐ婦人が、灯りのついた店を通りすぎる。
切り取られた日々の断片が、練られた構図と色彩の中で、美しい余韻として心に突き刺さる。
風の森 猪熊佳子 緩やかで瑞々しい自然を観察した、日本画の可能性を広げる作品になっています。
森の中の風や、樹々の息吹きが感じられる秀作です。
画室の花 大﨑多実穂 シンプルなモチーフの構成でありながら空間への意識が高く、凛とした精神性があり、独自の世界を持っている。多くを語らぬ静かな色や形の表現は暖かく、時に少年のような初々しさ、清々しさを感じる。
光の影 櫻井伸浩 日本美術の特質を絵画と工芸意匠の間における互換性に見る考え方がある。一方、近代日本画には、西洋美術を意識して、これを否定的に捉える態度がある。この作品は、後者に対する果敢な挑戦と見られ、作家の豊かな感性と高い技術力によって、独自の絵画世界を創り上げている点を高く評価する。
追想 竹内昌二 多くの子供達を楽しませたメリーゴーランド。役目を終え今は静かに佇んでいる。華やかな過ぎた時間を内包する遊具には無常観や作者の情感が良く表現されている。中央部に集約された強い色彩も効果的である。
鼓動の旋律 戸田淳也 動物を形体と生態の両面からとらえ、単なる動物画ではなく、密林でおたけびをあげるがごとく力強く表現している。淡い色感と構成によって情景の緊張感が伝わってくる。
予感 新川美湖 墨という難しい画材を見事に扱い、モノクロームの静謐な空間を描くことに成功している。繊細な筆の線墨のたらしこみ等々、魅力の多い画面である。今後の活躍を大いに期待したい。
松永 敏 構成中の画室を上方より見た視点が独得で、人物と床をほとんど黒く表わし、床に広げたデッサンに視点が行く様に工夫がなされている。発想、構図共に大胆で、現場の状況が伝わってくる意欲作品である。
山ノ図 山田まほ 東洋美術の王道とも言える山水画に、この10 年来果敢に挑み続ける作者の作画姿勢に、大いに共感を覚えていた。今回の画面は山の個別性から離れ、記憶としての山、又、その山の霊性にまで食い込んだ秀作である。独自の感性と確かな技術に裏打ちされた、偶発性の強いマチエールは充分に同時代性を帯び、現代の山水画として立ち現れる。
行近壯之助 様々な色彩や形態がせめぎ合いながら、緊張感ある画面を創り出している。一見抽象画に見えながらも古代の神殿に続く階段を想像させる描写もあり、その事が作品に奥深い物語性を感じさせている。

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第2科 洋画(平成30年10月21日発表)

題名 作者名 授賞理由
廃虚の鳩 石井康博 しっとりとした色調の中、見事な画面構成と描写力をもって人物の存在感を表わしている。
目に見えないものまでをも感じさせる表現は、特選にふさわしい秀作である。
髙原の冬 一の瀬 洋 厳しい冬の大自然を暖色で表現した本作品は自然と向き合う作者の愛情が感じとれる。丹念に塗り重ねた重厚なマチエールと対象を鋭い造形感覚で再構築された画面構成に魅力がある。
静寂な世界が広がってくる。
春風 上平澄江 現代の風景画であるといえる。都会の姿をガラスに映った光で表現している。技術的にも、ガラスを描くのは難しいにも関わらず、的確な描写力で描ききっている秀作である。
睦月 宇野孝之 年の初め、稲穂の簪を挿す舞妓像である。伝統と格式を重んじる厳しい世界に身を置く若い女性の凛とした姿を真正面から描いた本作は、瑞々しくも確固とした女性の決意をも感じさせる秀作である。
ボクサー 金築秀俊 自身の若い頃の体験をもとに長く取り組んできた題材である。中でも本作は、ポスター等の渋い色調の中で適所に効かせた白の魅力と、間の取り方、焦点となる顔の描法が相俟って、鋭い切れ味を見せる佳作である。
室内 河本昭政 淡い色面の室内に女性の座像があり、作家の大切にする心模様が表現されている。独特な色面構成であり秀作である。
今後、日展を背負う作家である。
銷夏 越谷なつみ 静かな中に、凛として、詩情を感じさせるたたずまいがよい。人物を正面からとらえたオーソドックスな取り 組みだが、無難におさめるだけではなく、作者ならではの何かを探ろうとする気配が見える。
横浜夕景29・観覧車 小林理恵 女性ならではの鮮やかな色彩と大胆な構成で、華やかな大観覧車のたたずまいと、それを包みこむ都会の夜の静謐さがかもしだされている作品。
蒼のロンド 待井恭子 長く取り組んできた静物画ですが、今回は特に華やかさがあり、色彩のバランスも全体の構図も素晴らしく、実のサイズよりも大きく見えました。
春近し 山本浩之 自分のイメージを色と形の造形物に組み立てるのが絵です。そして具象作家は、最終的に情緒に訴えるところまで行けばと思うものです。
この絵には、その情緒を感じます。

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第3科 彫刻(平成30年10月25日発表)

題名 作者名 授賞理由
星にねがいを 秋田美鈴 小柄な像でありながらも、伸びやかなポーズで大きく感じる。造形の見どころを像全体に心地よく配置することで、バランスの良いコンポジションに成功している。衣装の褶曲に潜む身体表現にも魅せられる秀品である。
夏の終わりに 岩谷誠久 体の中心を流れる動きが正に古典のコントラポストをふまえて自然で美しい。精度の高い造形から的確なデッサン力を感じる。人体具象彫刻の本質が感じられる力作である。
はじまりのリズム 岡本和弘 ゆっくりと、焦ることなく静かに歩み始めたその姿は、どこか作者自身の決意を感じさせる。ノミ跡を適度に残して表面を優しく軽く研ぎ、うっすらと着色することで、女性特有の暖かみが美しい木彫作品である。
ワンハート(ユメと私) 屋田光章 帰ってきた主人を嬉しそうに出迎える犬。作品「ワンハート」は飼犬も家族であることを示しているのだろう。 まるで「ただいま。」「おかえり。」と言っているようだ。顔や手のしぐさが的確に暖かく表現されている。
海からの風 加山総子 静かで暖かみのある女性立像である。さわやかな風を感じながら目を閉じ瞑想する表情から未来への明るい希望が感じ取られる。また石膏の材質を生かした彩色にも魅力を感じる優作で今後の制作が期待される。
せいくらべ 境野里香 微笑ましく、心が温かくなる作品である。この母と子の間にあるゆるぎない愛と信頼の形を、日常の自然な営みの中から見事に題材化した作者の視点と、抑制の効いた彫刻の表現技術が高く評価された。
重政信明 重厚な量感と、左右のバランスが巧みに計算された構成によって、彫刻としての存在感と心に伝わる軽やかさが両立されている優作である。朝陽を受ける女性の姿が見る側の心も豊かに満たしてくれるようである。
友よ未来も 丹羽俊揮 風に身を委ねるようなシンメトリー性の強い構成を通して、鑑賞者に爽快感を与える作品である。髪、コスチューム、地山が連呼するようなタッチを残すことで作品に調和が生まれ、作者の技量の高さが感じられる。
花水木 森田一成 粘土のもつ瑞々しさを極限までいかした造形に鮮度を感じる。大地と対話をするようにダイナミックにモデリングされた量感表現や、スピード感あふれる塑造の痕跡に、力強い生命感を感じる秀作である。
脚を組む女 安田陽子 豊かな量感と堅実な構成により、どの方向から見ても見応えがある。更に、脚を組んで遠方を見つめるような悠然とした姿を通して、内面から溢れ出てくる生命力が感じられ、鑑賞者をとらえて離さない秀作である。

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第4科 工芸美術(平成30年10月21日発表)

題名 作者名 授賞理由
光輝燦然 大塩 正 非常にシンプルな造形であり、口の作り方に斬新さが強調されている、たおやかで気持の良い作品となっている。パールラスター釉を施し、光り輝くものにあこがれる作者の思いを具現作化した秀作である。
花守の刻 兼先恵子 染料の特性である透明色彩の輝きが際立つ作品である。訪れる春の中、ボタンの美しさに心をうばわれると共に事象の内に花の変化を見い出す作者が在る。花の美しさを通しての時間をテーマにした作品である。
記憶 ∞ 創造 川口 満 記憶・知識・創造の重層を極め、パーフェクトな構成力で、闇から未来へ、そして、未来への扉を開く無限の可能性を表現している。異素材と複雑な構成を未来感のある造形に結晶化させた秀作である。
唐草想起・オリエンス 小畠泰明 鉄の持つ力強さ生かしつつ作者の加工技術により植物のような柔軟と繊細さを併せ持つ不思議な魅力のある作品である。その繊細さは表面の仕上げにも生かされ銀でつくられた蜥蜴なども効果的である。
時空体 小割哲也 大地に根を下した建築物の様な姿の中にリズミカルで力強い刻紋が施され、そのうえからたっぷり掛けられた緑釉の発色も美しく存在感のある作品となっている。
白雲自在 十二町 薫 白雲になり、異なった世界を見たいという願望が発想原点となっている。このイメージをそびえ立つ高層ビルの情景に託している。リズム感のあるシャープな線と面の構成が糸目防染によって表わされ、作者の心の内が見事に表現されている。
望郷 田中貴司 船と人物で遠い祖国への望郷の思いを表現している。色乾漆粉と色漆を使い、細やかな螺鈿をアクセントに研出技法を駆使し強い黒とグレーの色面が人物を際立たせる効果を果たすとともに、画面に重厚さをかもし出している。
月のふね 西川 勝 特殊なひねり技法を用いて、海に浮かぶ夜空の月を小船にたとえた心象表現の力強い作品に仕上っている。明るい色調の中に彫った線と銀色で描いた線がリズミカルに入り、中と外の一体感のある作品に仕上がっている。
流紋―2018 本間秀昭 竹の持つ強靭でかつ、しなやかな特性を生かし、冬の日本海の強風と荒々しく打ち寄せる波を単純な造型に昇華させ、技法の複雑さをまったく感じさせない見事な作品である。
つむぐ・杜 向山伊保江 様々な七宝釉を使用し、現代的で明るい構成で神々の杜に響く詩情を美しく表現している。部分的に使用した金銀箔や着色した銅板や真鍮も効果的で作品に変化を与えている。

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第5科 書(平成30年10月22日発表)

題名 作者名 授賞理由
高啓詩 池田毓仁 中国の古代文字を表現の素材とし、高啓の五言律詩を作者独自の運筆で揮毫した秀作である。各文字の造形に工夫があり、三行全体にわたり四十字が美しく調和している。墨調の変化にも極めて味わい深いものがある。
岡本藍石 懐素を基調に、確かな骨格の文字と強靭な線条とで「気の充実」を図った行草作品である。強くリズミカルな運筆が心地良い響きとなり、後半への盛り上がりを効果的にしている。行間、字間の余白も美しく練度が高い。
古今集・四季 小木曽郁子 清らな空気感を放ちつつ、絵物語的な風景を彷彿とさせる墨色の美しい秀作。小字という仮名本来の姿を、古筆の学書を基に現代に昇華させている。「和」の美が遺憾なく発揮された格調高い一作といえよう。
成歡 鹿倉碩齋 篆書縦二字を気宇壮大に表現し纏めあげている。筆線墨色は変化に富み大胆・明快で華やかであり、特に切れ味のよい筆致が印象的だ。今後の大字の新たな方向性を示したといえる作品である。
王阮亭詩 梶山盛涛 書の規範である文字中心の厳正さ、余白美を産む全体を纏める構成力の見事さ、それに切磋琢磨された趙之謙書風の重厚な線条、それら墨法技術が相俟って、落ち着いた雰囲気、格調高い風格を備えた作品に仕上がっている。
中尊寺 金子大蔵 重厚明快な若さ溢れる作品である。エネルギーの充実、凛とした躍動感、線と行間の響き合い、余白の美しさ等が魅力的であり、現代性豊かな調和体作品である。
花影 藤川翠香 凛とした余白の白さが目に飛び込んでくる作品である。控えめの墨量が鍛えた線を引き立て、中央の山場を美しく演出している。作品全体はフレッシュで明るく、揺るぎない構成の上に立つ格調高い秀作である。
關山じんじん(※)蒼 ※上側「陣」に下側「土」が2文字連続 真鍋井蛙 中国に印制が伝えられた戦国時代の「巨璽」をモチーフとして独自の創意を加味した作品に仕上げている。安定と変化という相反する章法を対峙させ纏めあげた力量は高く評価される。
晩泊濟陽 山内香鶴 鋭い線質が生かされた気に満ちた作品である。書き振りは明清の行草体であるが、遡れば王羲之にいきつくことを感じさせる。
紙面からはみ出しそうな線の動きからは中国明代の徐渭のもつ迫力を感じる。存在感のある作品である。
月見草 湯澤 聡 大字仮名を正面から取り組んだ作品である。強靭な線で書き上げられた作品は紙面全体に気力が満ち溢れている。潤渇は美しく、また立体感を生み出している。品格の高さを感じる秀作といえよう。

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